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楽典ってなに?

楽典って、何だか知っていますか?音楽の基礎としてクラシックでは重要視されているものですが、楽典の3分の2はポップスにも共通する知識なんです。ジャンル問わず基本中の基本というわけですから、作曲するにも演奏するにも音楽人なら知っておいて損はないはず!

 

楽典に含まれる知識の多くは楽譜の読み書きに欠かせないため、楽典=楽譜の文法などと呼ばれることがあります。ただ、単に楽譜についてのルールだけを指すのであれば「記譜法」というエクリチュールが別に存在するので、こちらの方が「楽譜の文法」としてはしっくりくるかもしれません。では両者の違いは何かと言うと、記譜法が楽譜の読み書きに特化したものであるのに対し、楽典に書かれている内容は必ずしも読譜・記譜に必要な知識だけではないという点です。例えば楽典に書かれている和音についての知識は、楽譜を読み書きすることと直接の関係はありません。音符や休符の書き方は単音でも和音でも差異はなく、シンプルに同じルールに基づいて記譜するからです。ところが、作曲の観点からすると和音の知識は必須です。もし和音の定義や積み方、単音とは異なる特殊な取り扱いについて知らなければ、作品の幅が大きく制限されてしまうでしょう。それに演奏をする際にも和音の知識は役立つため、記譜法を内包する「楽典」を学ぶ事には大きな意義があるわけです。

 

日本では義務教育(音楽の授業)の中で楽典の内容をある程度は学ぶので、日本で生まれ育った人なら最低限の音楽知識は持っていることになります。リコーダーを演奏したり混声合唱を歌ったりするために、ト音記号や音名などについて習ったのを覚えていますか?これらの知識も含め、楽典に書かれている内容は次の3つのいずれかに該当します。

1.音高に関すること(音名、音程、音階、調、和音など)
2.時間に関すること(音価、リズム、小節、拍子など)
3.表現に関すること(音色、強弱、速度、奏法など)

 

  記譜 表現 考え方
1.音高に関すること 必須 数値 理系的
2.時間に関すること 必須 数値 理系的
3.表現に関すること 省略可 言語・記号 文系的

 

このうち「1、2」と「3」には、決定的な違いがあります。それは「3」がある程度演奏者に委ねられる(委ねるべき)要素だということです。実際「3」に属する知識は言語的なものが多く、「優しく歌って」とか「ここからここまでかけて大きくして」とか「だんだん早くなって一時停止」というような指示を専門用語や記号で表記することになります。でも、無理して専門用語や記号を覚えなくても、必要に応じて楽典を見れば解決しますよね。これがいわゆる暗記モノである「3」のよいところです。しかも、ポップスやジャズの世界では演奏者任せなのが通例で、表現に関することを作曲者が楽譜に書き入れることは滅多にありません。

 

一方、「1」「2」については楽譜を書く上で省略することはできず、作曲者がしっかりと記しておかなければならない要素です。とくに「1」は音程や音度などの計算が中心で、かなり理論的な考え方をすることになります。「2」は多少の暗記要素もあり、音符や休符の種類を一通り学べばすぐに自分の知識として使えるようになるのですが、「1」の方はとにかく数えることばかりなので計算(足し算と引き算のみですが)が嫌いな人はうんざりしてしまうかもしれません。

 

そういうわけで、楽典のヤマは「音高に関すること」だと言えます。「3度でハモらせる」「半音上げるために臨時記号を使う」「転調して調号を変える」こういった作編曲上の処理は、一見音楽的なように見えて実はどれもひたすら数える作業なんですね。また、楽典の3つの要素とは別に、音楽の3要素というものがあります。内容は「メロディ」「ハーモニー 」「リズム」で、そのうちのハーモニー(=和声)については次の記事で紹介しています。

2018/01/01:  楽典
≪ 音階     和声法ってなに? ≫