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管弦楽法ってなに?

管弦楽法とは、管弦楽曲、つまりオーケストラの作曲や編曲に関する技法や理論のことで、オーケストレーションとも呼ばれています。管楽器、弦楽器の演奏経験がある方はイメージも湧きやすいのですが、そうでない方が本物の楽器に触れずに学ぶのは大変難しいという点で、他のエクリチュールと比較するとハードルが高いと言えます。

 

意外だと思われるかもしれませんが、実は管弦楽法は「オーケストラの書き方」ではないんです。管弦楽法の本には、オーケストラ曲を作るために最低限知っておかなければいけないことや、そのヒントになることは数多く記されていますが、残念ながら「これを読破すればオケが書けるようになる」というものではありません。

 

ではどんな内容なのかというと、中身は大きく「楽器そのものについての知識」と「楽器の使い方や組み合わせ関する知識」とに分けられます。前者はオーケストラで使われる各楽器の構造や奏法、音域、音色などで、後者はその前提知識を使って各楽器をどう配置していくかが論点となっています。

 

管弦楽法の難しいところは、いくら本を読んで楽器の知識を増やしても、実物に触れたり音を出してみたり(あるいは目の前で演奏してもらったり)しながら生音を聴くプロセスを繰り返さない限り、なかなかスキルとして使えるようにならないという特殊性にあります。少なくとも、その曲のスコアを読みながら音源を聴いたり演奏動画を観たりする習慣が必要でしょう。

 

その点、吹奏楽部や管弦楽部の出身者は大きなアドバンテージを持っています。どの楽器が全体の中でどういった役割を果たしているか身を持って知っていますし、自分の担当楽器であれば「この辺りの音域は高すぎて辛い」「このパッセージは運指が困難」といった事まで、学ばずとも知っているからです。特定の楽器や音楽ジャンルについて、その分野の演奏家以上によくわかる作曲家というのはいないんです(もしいるとすれば、その作曲家であると同時に奏者でもあるはずです)。

 

エクリチュール全般に言えることですが、理論に実習が伴わないとなかなか身に付かないものです。管弦楽法に限らず和声法や対位法でも、学んだことを活かして書いた譜面上の音符が実際に音として鳴ったときにどう聴こえるか、どう響くかを体験することがとても大切です。音楽理論はあくまでも知識であって、インプットしただけでは使えるようになりません。自分で書いた楽譜の出音を都度確認しながらアウトプットにあたる実習を繰り返すことで、徐々に会得していくことができます。

 

 

では、管弦楽法の具体的な内容について、ほんの一部だけ紹介しましょう。

 

オーケストラは管弦楽という日本語の通り、管楽器や弦楽器で編成された楽団です。主に「木管楽器」「金管楽器」「弦楽器」そして管弦楽という名称には含まれていませんが「打楽器」の4つのセクションに分けられます。

 

管楽器が「木管楽器」と「金管楽器」とに分けられていますが、これは管体の材質ではなく、唇の振動によって音を出すものを金管楽器、それ以外を木管楽器として分類しています。フルートが昔は木で作られていたから木管楽器だという説も理解しやすい話で良いのですが、仮に昔から金属で作られていたとしても木管楽器だったということですね。

 

音が空気の振動によって伝わることは、小学校の理科の授業で教わった記憶があるのではないでしょうか。学んだ通り、楽器のどこかしらが振動することで音が鳴るわけですが、その震動源を「リード」といいます。震動源が楽器側でなく人体側(唇)にある場合は「リップリード」と呼ばれていて、金管楽器(トランペット、トロンボーン、ホルン、チューバなど)はすべてリップリードの楽器ということになります。

 

一方、木管楽器は唇以外が振動する楽器なのでいくつか種類がありますが、代表的なのは「葦」です。「人間は考える葦である」の、アレですね。リード(英:reed)の語源はここにあり、多くの木管楽器はこの植物を振動させて音を出します。乾燥させた葦を2枚重ね合わせるタイプを「ダブルリード」(オーボエ、ファゴットなど)、1枚の葦をマウスピースに固定するタイプを「シングルリード」(クラリネット、サクソフォンなど)、葦は使わず息を吹き口の角に当てて発音するタイプを「エアリード」(フルートなど)と呼びます。エアリードは、瓶の口に息を吹きかけると音が鳴るのと同じ原理ですね。

 

弦楽器(ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス)は大きさが違うだけで震動源はすべて同じなので、イメージしやすいですね。弓で擦る、あるいは指で弾くことで弦を振動させます。そして打楽器(太鼓類、トライアングル、シロフォンなど)には色々な種類がありますが、叩かれて楽器自体が振動するものが多いといえます。このようにすべての楽器は振動源を持っていて、それが音色に大きく影響しています。

 

ピアノ曲のように単色(一楽器)で完結させる音楽とは異なり、豊かな色彩を表現するオーケストレーションは音色(楽器や音域)の選択が最重要事項となります。和音や旋律をどう配置するかの基礎は先に和声法や対位法で学ぶべきで、管弦楽法は(その基礎を前提とし)様々な個性を持った楽器の音色を最大限魅力的に響かせるためのものですから、それらを踏まえて最適な学習方法を選んで頂けたらと思います。

2018/04/01:  管弦楽法
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